官民連携まちづくり推進協議会

お知らせ・活動報告

第18回(2023年度第1回)会議を開催しました

2023年5月23日

2023年5月23日(火)、東京にて、第18回「官民連携まちづくり推進協議会」を開催しました。会場で参加された方々をはじめ、オンラインでのご出席も得て、全国の26団体48名が参加されました。

冒頭で、当会世話人代表の山口哲央は、「今年度は、5周年を迎えるにあたり、今後の発展につながる新しい事業ができれば良いと考えています。企業や大学などと協働するまちづくり、企業連携や、産学官など全体とつながっていくようなイベントづくりを目指したいです。まちづくりに関心がある仲間を広げ、会を発展的に進めていきましょう」と挨拶を述べました。

会場とオンラインを通じて行われた自己紹介では、参加者より、地方創生とSDGsに関わる現在の業務内容やその成果、課題点などを共有。ユニークな発表も飛び出し、笑いが起こるなど、和やかな雰囲気で進行しました。

続いて、「SDGs×生涯活躍のまち」をテーマに、各界で活躍する三者のパネルトークを実施しました。

はじめに登壇されたのは、厚生労働省より野﨑伸一氏。「“ひとり”から始まるこれからの地域づくり~SDGsと『地域共生社会』の構想~」と題してお話し頂きました。

野﨑氏は現在、官民交流制度を用い、アミタホールディングス株式会社に出向されており、執行役員として、資源循環とコミュニティ形成を両立するしくみ「MEGURU STATION®」の開発と展開に尽力されています。

社会保障の変遷とその背景を切り口に、「自助や公助が成り立たない個人化の進む現代、社会のあり方や個々の暮らし方、また社会のつくり方をアップデートする必要が生じています」と課題を提起。さらに、「もし自分が今、がんで倒れたらどうなるか?」という自身の問いかけをきっかけに、保障対象に制限があることなどに疑問を抱き、共生社会論をライフワークと考えるようになったとのエピソードを紹介しました。

「必要なのは、特定の誰かのための制度ではなく、誰もが生きやすい社会、みんなを支える社会です。そのためには、地域福祉だけでなく、さまざまな課題をつなげて考えていく地域共生社会が必要です」と続けました。また、重層的支援体制整備事業の創設が、特定の人のみでなく、すべての住民を支援するしくみとして、その風穴になったのではないかと述べました。

野﨑氏は最後に、「福祉はもともと、幸せを意味する言葉です。福祉もまちづくりも目指すものは同じ。みんなが参加でき、みんなが幸せな包摂的なまちづくりが、福祉にもまちづくりにも究極の目標です。福祉に関わる人、まちづくりに関わる人が出逢い、お互いに学び合って、それぞれが小さな円となりつながっていくというエコシステムが、地域には必要になっていきます」と結びました。

野﨑氏より紹介された、アミタホールディングス株式会社の取り組み「MEGURU STATION®」について、その具体的な活動内容をご紹介下さったのが、お二人目のご登壇者、同社取締役副会長兼CEPOの佐藤博之氏です。

地域交流センターで勤務後、グリーン購入に特化した活動を展開、40代で初めてビジネスの世界に飛び込んだという、異色の経歴の持ち主でもある佐藤氏。「環境問題は、単独では解決できないことを痛感し、解決する場は、暮らしの場である地域にほかならないと考えています」と切り出し、SDGsを俯瞰的に捉える視点をご提示くださいました。

「SDGsの17のゴールは並列なものではなく、すべてに因果関係があります。持論になりますが、その中でも、12番の『つくる責任 つかう責任』に表される、大量生産大量消費の社会そのものが、全ての問題の源泉です。これらは、効率化、分業、縦割りの社会を生み、コミュニティの弱体化の原因になっています。そして、これらの解決の出口が、17番『パートナーシップで目標を達成しよう』です。つながり直すこと、関係性の再構築が、唯一の解決策になります。循環的な関係性をどうつくるのかが、全ての課題の出口だと考えています」と力強く語りました。

この問題意識を起点に、地域をフィールドとし、循環する「関係性のプラットフォーム」として開発されたのが、「MEGURU STATION®」です。現在、南三陸町、神戸市、生駒市などが、このしくみを取り入れています。

MEGURU STATION®は、いつでも開いている地域の資源回収拠点。いつでもごみ出しができるため、自然と人が集う場となり、きれいで質の高い資源が集まることが特徴です。佐藤氏は、「ごみの分別には会話が生まれます。会話をしながら、徹底的に分別を行うのがMEGURU STATION®です。ごみ出しをしない家庭は皆無ですから、まさに、だれも取り残されない活動です」と紹介。人が集うと経済活動が生まれ、趣味のコミュニティも生まれます。ごみ出しを動機とした、互助共助コミュニティ機能と、資源循環機能を両立するしくみが形成されています。

佐藤氏は、この取り組みについて「資源、気持ち、経済が回る可能性が見えてきた」と手ごたえを語ってくださいました。

最後のご登壇者は、当会のメンバーである、生駒市 地域活力創生部で部長を務める、領家誠さん。「持続可能な地域コミュニティづくり~複合型コミュニティ(まちのえき)とSDGs」と題して、お話しくださいました。

複合型コミュニティである「まちのえき」は、歩いて行ける自治会を拠点に、住民が足を運び、交流する場の構築を目指し、生駒市が補助金制度を設け、展開する事業です。市内全127の自治会のうち、現在12の自治会で活動が始まっています。

領家さんは、取り組みの背景に、希薄化した共助の呼び戻しの重要性があることを語り、「まずは地域に、自治会単位で交流活動を推進し、企業とは、SDGs・公民連携の切り口から共助を引き出せないかということを考えています。また、さまざまな個人に対するアプローチも展開しています。市役所は、これらのプラットフォームをしっかりつくることが仕事になります」と続け、多様なレイヤーがつながること、また、どのようにつながるのかを考えるのが市役所の役割であると強調しました。

また、脱炭素先行地域でもある生駒市では、環境を軸に、SDGsを推進しています。市民電力会社の取り組みをコアに据え、まちのえきの活動も絡め合わせた展開を試みています。

領家さんは最後に、一連の取り組みの課題点に触れました。「意識の高い福祉の多機関協働にとどまらないか、参加支援をうまく展開できるか、一部の人のやりたい活動や意識の高い層のみの参加にとどまらないか、などの課題意識を持っています。市民と事業者と市役所が、一本にまとまることができる活動を創出できるかが肝になります。また、交流と銘打つと、対話は楽しくないといけないという前提があります。この中に、本当の課題をどのように潜ませるのか、市役所職員が適切に介入できるのか、縦割りを超えて協働できるのかなども課題です」

三者のパネルトークには、会場内からも多くの共感の声が上がるとともに、質疑応答なども活発に行われました。

会の最後は、共助の弱まりに対する働きかけの重要性を再認識するとともに、「あらためて福祉とは、幸せという意味だと実感しました。今後も、みなさんで情報の共有をしていけたらと思います」という山口世話人代表の言葉で締めくくられました。

冒頭で触れました通り、当会も5周年を迎えます。新しい視点や活動を取り入れ、ますます充実した会を計画していきたいと考えています。ご興味をお持ちの自治体の方や、地域再生推進法人の方などは、お気軽にお問合せください。

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